半かけ
半かけの昼の月ですあのひとは そこにあるだけそれがしあわせ
存在してくれることのしあわせ。
巡り合ったことのしあわせ。
これ以上なにが必要だろうか。
31文字ものがたり 
2013年10月22日 (火)
うわさ
土のなか球根たちが噂するむずむずしたら春なんだって
クロッカスとチューリップ、すずらんの球根を買った。
ベランダで緑は育てるのだがじつは花が苦手で今まで買うのを
敬遠していた。
賑やかな色とりどりの花がわたしの心持ちと合わないのだ。
ただ今年はもうすぐ３歳になる姪がいっしょにいる。
球根を植え、育て、芽をだし花が咲くのを見せてやりたいと思うようになった。
幼い日に一番はじめになりたかったのが｢お花屋さん｣だったことを
思いださせてくれたのだ。
今から春が来るのが待ち遠しくてならない。
ゆらめいて
秋だから人恋しくて鍋に浮く豆腐のようにゆらいで誘う
人混みのなかのいるときにひどく孤独を感じるのはわたしだけではないだろう。
ひとりでいるときはその時間を満喫し、人恋しくなることも孤独を感じることも
あまりない。
きっと他者との比較なのだろう。
人混みの中には仲睦まじい家族や恋人同士など、孤独を感じさせる他者が
多く存在するのだ。
寂しいと思うこと、だれかとともにいたいと思うことが少なくなった。
いつしかわたしは孤独を好むようになったのだと思う。
2013年10月 6日 (日)
迷い猫
手のひらの迷路にはまり迷い猫あの道この道行くか行かぬか
2013年10月 5日 (土)
美しく
一膳の箸のすがたも美しく背筋をのばす五人のしもべ
ｐｈｏｔｏ 写真素材 足成さま
2013年10月 4日 (金)
ぴんとする
紙を折り色とりどりに祈ります三角のかどはぴんとして
photo 写真素材 足成さま
2013年10月 2日 (水)
くしゃみ日和
キスがふる、あちらこちらにキスがふるおかげで今日はくしゃみ日和
2013年9月27日 (金)
なりたいの
それからね、ぬくい毛布になりたいの くるんと包んでぎゅっと抱かれて
2013年9月26日 (木)
恋して
秋風に頬を染めあげ吾亦紅 小首をかしげあなたを呼んだ
かくれんぼ
かくれよう さぁかくれよう さみしさがやってくるまえ眠りのなかへ
2013年9月19日 (木)
星のみた夢
家のない星が流れてゆくところ 夢みる人のぬくもりのなか
星拾い
星のない夜に星たち数えます 流れる星を貼りつけながら
2013年9月18日 (水)
光るもの光らぬもの
ねむれずに消炭色にそまるきみ 金平糖をだきしめながら
はじまり
手のひらのラムネをなげて星つくる それが宇宙のはじまりでした
2013年9月15日 (日)
真夜中のシーソー
かなしみの夜を蹴飛ばしシーソーする あなたでなけりゃ嫌だと泣いた
一番星
キラキラと瞬くことが仕事です 三日月の右やや斜めした
2013年9月14日 (土)
とろけだす
猫のびるまろやかな午後とろけだし あくびで目尻になみだをためた
ため息染まって
ため息の踏み切り渡った向こうがわ夕日に染まるひぐらしの声
賞味期限
約束の賞味期限が切れるのは あのお日さまが墜ちてきたとき
フライパンな夜
たそがれを薄く流してくるりと巻いてフライパンな夜がはじまる
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